【ルーツ】 RUSH(カナダ)
- アーティスト: Rush
- 出版社/メーカー: Island / Mercury
- 発売日: 1997/05/06
- メディア: CD
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(8th『Permanent Waves』フル音源)'80
(9th『Moving Pictures』フル音源プレイリスト)'81
あらゆるジャンルにおいてカナダを代表するバンドのひとつであり、いわゆるプログレ・ハード(プログレ寄りハードロック)の代表格とされるバンドでもあります。複雑なアイデアをすっきり聴かせてしまう作編曲と卓越した演奏力、そして味わい深い歌詞。商業的成果と音楽的影響力を高いレベルで両立した、極めて稀な存在です。
後続に最も大きな影響を与えたのが独特の“キャッチーな変拍子”でしょう。7拍子や5拍子をストレートに反復して突き進むだけでなく、「8+7」「5+6」「6+7」というような「A+A'」タイプの複合拍子も多用する。そして、その構成が実に滑らかなのです。ただ単に変拍子(4拍子や3拍子以外の拍子)を使っているというだけでなく、その枠内でのアクセント移動など、“引っ掛かり”“繋がり”の作り方が非常にうまい。フレーズの音進行も印象的なものばかりなのですが、その上でこうした巧みなリズムアレンジが“フック”になり、聴き手の耳に残る力を大きく増しています。そして、それをかたちにする各メンバーの演奏も素晴らしい。特にドラムスのNeil Peartによる“硬く打ち抜く”響きは絶品で、キレよく小気味よいタッチやパターン豊かなフレージングもあわせ、最高の生理的快感を与えてくれます。こうした演奏が巧みなリズムアレンジの上で反復されることにより得られる手応えは、他に替えようのない極上の珍味と言えます。代表曲として名高い「YYZ」(『Moving Pictures』3曲目)のイントロなどは、世界一格好良い5(10)拍子パートのひとつです。
また、RUSHは、以上のようなリズム構成に加え、音遣いの面でも多くのバンドに影響を与えています。たとえば『Permanent Waves』の最後を飾る組曲「Natural Sience」。冒頭の“静かな水のなかでまどろむ”感覚や、そこに陰がさして“ぼんやりした不安感に包まれる”ような音遣い感覚は、WATCHTOWERやSIEGES EVENといったテクニカル・スラッシュメタルの強豪にかなりはっきり受け継がれています。(後者は特に大きな影響を受けています。)後期DEATHのフレーズなどにもRUSHの影が感じられる箇所があり(6th『Symbolic』1曲目のアウトロなど)、こうしたテクニカルなバンドの成り立ちを解析するにあたっては、外して考えることのできない存在だと言えます。