プログレッシヴ・アンダーグラウンド・メタルのめくるめく世界

記事量が膨大になったので分割独立させました

【ハードコアパンク】 DISCHARGE(イギリス)

Hear Nothing,See Nothing,Say..

Hear Nothing,See Nothing,Say..


(EP『Why』フル音源:本編は14分半)'81

(1st『Hear Nothing, See Nothing, Say Nothing』フル音源:本編は27分ほど)'82

欧州ハードコアシーンの流れを決定的付けた最強のハードコア・パンクバンドであり、ハードロックやヘヴィメタルから大きな影響を受けた上でそれを素晴らしいオリジナルに昇華してしまったバンドでもあります。独特のリズム〜グルーヴスタイルは「D-Beat」と呼ばれ、それに様式美的にこだわるバンドを現在も量産し続けています。(というかそれがハードコアの世界における一つの主流です。)作品のアートワーク(白黒のモノトーン写真など)なども含め、後続への影響は絶大です。

ハードコアを聴かないメタルファンにDISCHARGEを説明するとしたら、「SLAYERのようなバンド」と言うのがわかりやすいのではないかと思います。一見ワンパターンで無茶苦茶な雑音のようでいて、音楽的な引き出しは非常に多く、シンプルなスタイルの中で陰翳豊かな表現をこなしてしまう。作編曲のセンスも演奏の味わいも抜群で、汲めども尽きせぬ魅力に満ちています。
“コンクリートの分厚いコンテナが重く滑っていく”ようなグルーヴ(D-Beat)は隙間感覚と不穏な勢いを見事に両立したもので、その圧倒的な魅力から、ハードコアシーンに留まらず多くのバンドに活用されています。また、一見モノトーンではっきりした起伏がないようにも感じられる音進行は、ロックンロール〜英国ロックの複雑な滋味を豊かに含んでいて、聴けば聴くほどその旨みに酔わされていきます。その上、この音進行はとても“味付け”しやすいもので、このスタイルを殆どそのまま受け継ぎつつ全く新しい個性を確立してしまったバンドも存在します。
G.I.S.M.やVOIVODなどはその好例。聴き比べると楽しいです。)

このDISCHARGE、本稿で扱われるバンドとの影響関係という点では多くの場合無視して構わないのですが、欧州ハードコア特有の“水気を含んでぶよぶよ膨れる”“空気をビリビリ震わせる”ギターサウンド(スラッシュメタルの硬く締まったサウンドとは異なる)など、アンダーグラウンド・ロック・シーンの流れを理解する上で重要な素材をたくさん持つバンドでもあります。ここを押さえるだけで一気に見通しがよくなるのは間違いないです。
上記2作はともに“うるさい音楽”における歴史的大名盤。単純に“耳が悦ぶ”素晴らしい音楽だということもありますし、是非聴いてみて頂きたいバンドです。