プログレッシヴ・アンダーグラウンド・メタルのめくるめく世界

記事量が膨大になったので分割独立させました

【テクニカル・スラッシュメタル】 TOXIK(アメリカ)

Think This

Think This


(1st『World Circus』フル音源)'87

(2nd『Think This』フル音源)'89

'84年結成(TOKYOから改名)、'92年に一度解散。スタイル的にはスピード・メタルの一種と言えますが、著しく高度な技術と音楽性は比すべきものがありません。本稿で扱うバンドの中では最高レベルの実力者で、極めて優れた作品を残しながら十分な知名度を得られていない不遇のバンドでもあります。

TOXIKの音楽性を一言で表すのは非常に難しいです。音遣いの印象をまとめると「QUEENSRYCHEの2nd『Rage for Order』をジャズの楽理を用いて強化したら近現代クラシックに近づいた」という感じなのですが、特定のバンド・アーティストではっきり「似てる!」と言えるものは殆ど存在しません。
中心人物である超絶ギタリストJosh Christian(メタルの歴史の中でも最も優れたプレイヤーの一人)のインタビューでは
「音楽一家に育ち、ジャズ・クラシックからロックまであらゆる音に接して育った。両親はYESやKING CRIMSON、MAHAVISHNU ORCHESTRAなどにのめり込んでいた」
リードギターの面ではVan HalenとUli Jon Rothが最大の影響源で、Richie BlackmoreやUKでのAllan HoldsworthKING CRIMSONでのAdrian Belew、Yngwie Malmsteenなどにも影響を受けた」
「'80年にMOTORHEADを聴いたとき全てが変わった」
という発言があり
これを読んだ上で聴いてみると、確かにMAHAVISHNU ORCHESTRAやYES(ストラヴィンスキーバルトークなどの近現代クラシックに通じる和声感覚がある)をVan HalenやUli Jon Rothのような“ブルースがかったクラシカルな音遣い感覚”で料理したらこうなる気もするのですが(Uliは「Yngwieの影響源」として語られるようなクラシカルなフレーズを身上としていますが、Jimi Hendrixからも絶大な影響を受けています)、「こうした諸々の要素をそのまま足せばTOXIKの個性的な音楽が生まれる」と言うことはできません。上に挙げたものだけでなく、同時代を生きた様々な音楽を貪欲に取り込み、そこから得たエッセンスを土台にして“一から自分の手で”優れた個性を確立してしまった、ということなのでしょう。

楽器陣は全てのパートが超強力。Ron Jarzombekの項でも述べたような「技術と勢いの両方を大事にする気風」が見事に実践され、「凄まじい技術を用いてなりふり構わぬ勢いを生み出し、しかも“ひけらかし感”がなく全てが興味深い」最高の音楽が生み出されています。
達人揃いの楽器陣に比べるとボーカルは完璧とは言えませんが(1stは裏声寄りミックスヴォイス、2ndはGeoff Tate(ex. QUEENSRYCHE)的な地声寄りミックスヴォイスという感じの中途半端な“ハイトーン”スタイル)、かなりしっかりした発声によりまろやかな質感を加えつつ、勢いのある歌い回しで凄まじいテンションを生み出すことができていて、アンサンブルの足を引っ張るようなことはありません。この手のスタイルにおいては良い方なのではないかと思います。

本活動期間中に発表された2枚のアルバムはともに大傑作。ストレートなスピードメタルの1st、入り組んだリズム構造の上で複雑な和声感覚を表現する“プログレッシヴな”2nd、という感じでややスタイルが異なりますが、このどちらを上とするかは好みの問題でしょう。
(個人的には2ndを推します。テクニカルスラッシュ〜プログレデスの歴史においても最高レベルの傑作だと思います。)
複雑ながら非常にわかりやすく“刺さる”音遣いは他では聴けない魅力に溢れています。ぜひ触れてみることをおすすめします。

TOXIKは現在再結成して活動を継続しています。今年(2015年)新譜を発表する予定とのこと。とても楽しみです。