プログレッシヴ・アンダーグラウンド・メタルのめくるめく世界

記事量が膨大になったので分割独立させました

【テクニカル・スラッシュメタル】 REALM(アメリカ)

Endless War

Endless War


(1st『Endless War』フル音源)'88

'85年結成、'92年解散。TOXIKとほぼ同期のバンドで(上のJosh Christianインタビューでも言及されています)、スピードメタル〜テクニカルスラッシュメタルを代表する強豪の一つです。'80年代の(NWOBHMというより正統派寄りの)メタルに'70年代のプログレッシヴ・ロックなどの要素(KING CRIMSON「One More Red Nightmare」のカバー音源あり)を加えたスタイルで強力な作品を残しました。

REALMは、アンサンブル全体の完成度という点では最も優れたメタルバンドの一つでしょう。きびきびした“トメ”と鞭打つ“ハネ”を両立したグルーヴは驚異的で、高速疾走しても全く崩壊しない安定感もあって、凄まじい“運動神経”を感じさせてくれます。(クロスオーバー〜ハードコア的な“筋肉の躍動感”ではなく、“精密機械が滑らかに駆動していく”ような質感がある。)その上ボーカルが凄まじいのです。Midnight(CRIMSON GLORY)をRonnie James Dioに寄せたようなパワフルなハイトーンが強力無比で、この系統のボーカリストの中では最強の一人と言えるでしょう。そうしたリードボーカルが圧倒的存在感を示しつつ先導するアンサンブルは高機動の一言で、理屈抜きの生理的爽快感を与えてくれます。こうした演奏の魅力に触れるだけでも一聴の価値があるバンドです。

作編曲も素晴らしく、高度で個性的な音遣いが実に興味深いのですが、その一方で、ある種の限界を感じさせる面もあります。「コード進行から全体を構成せず、フレーズの断片を並べてなんとかしようとする」(多くのリフ主導メタルで採用される)やり方で曲を作っているため、(フレーズの引き出しがあまり多くないこともあって)曲展開の広がりがどうしても制限されてしまうのです。2ndアルバムはそういう問題点が前面に出てしまった作品で、変拍子を多用したリズム構成と先述のようなストレートな機動力との食い合わせが悪いということもあり、全編興味深いのにもかかわらずどこか煮え切らない印象がつきまとう仕上がりになってしまっています。
一方、1stアルバムではそうした問題がなく、アンサンブルの特性と作編曲の性格がともにうまく活かされています。BEATLES「Eleanor Rigby」の倍速カバーも凄まじい出来映えで、このバンドの得意技が全ての面において見事にキマった傑作と言えます。

持ち味の発揮という点ではうまくいかないところもありましたが、超強力なアンサンブルに関して言えば、スピードメタル〜スラッシュメタルの一つの頂点を示すバンドです。聴いてみる価値は高いと思います。