プログレッシヴ・アンダーグラウンド・メタルのめくるめく世界

記事量が膨大になったので分割独立させました

【テクニカル・スラッシュメタル】 DECISION D(オランダ)



(1st『Razon De La Muerte』フル音源)'92

'86年結成、'95年に一度解散。「欧州を代表するクリスチャン・メタル・バンド」と言われたこともあるようですが、ネット上には殆ど情報がなく、その真偽を調べることは困難です。

このDECISION D、殆ど無名のバンドなのですが、本稿で扱うものの中でも屈指の傑作を残した実力者集団です。後期CORONERやMORBID ANGELをスピード・メタル化したような音遣いは他の何かと比較しづらいもので、淡白な印象を保ちながらとても表情豊かに変化していきます。過剰にメロディアスにならず、それでいてモノトーンにもなりきらない。感情を揺らしすぎずに潤いを与えてくれるさじ加減が絶妙で、居心地の良さと得体の知れない深みを両立しています。また、演奏も非常に強力です。全パートが個性と技術を兼ね備えた実力者で、リーダーであるEdwin Ogenioのボーカル(HOLY TERRORのKeith DeenとSABBATのMartin Walkyierを足して強化したような感じで、テクニカルスラッシュ系のボーカリストでは群を抜いてうまい個性派です)も圧倒的に凄い。あらゆる面において他では聴けない素晴らしい珍味を提供してくれるのです。

本活動中に発表した3枚のアルバムはどれも超強力ですが、まとまりやとっつきの良さでは1st『Razon De La Muerte』がベストでしょう。あからさまに“ただならぬ”色合いを前面に出してはいませんが、CORONERやTOXIKの作品にも劣らない格をもつ傑作です。キリスト教をテーマにした歌詞も、ボーカルが淡々と演技過多な歌い回しをし続けることもあって不思議と鼻につきません。ひねりの効いたリズム構成をすっきり聴かせてしまうアレンジなども見事で、聴き込むほどに興味深く楽しめるようになります。機会があればぜひ聴いてみてほしいアルバムです。

'95年の解散後、Edwin Ogenioは牧師をやっているようですが(担当の教会があるとのこと)、'09年には自分以外の全メンバーを入れ替えてDECISION Dを再結成しているようです。「新作を製作中」というアナウンスも確認されているものの、やはり目立った情報はなく、現在何をしているかは殆ど伝わってきません。極めて優れた作品を残していながら無名のままという何とも惜しいポジションにいるバンドなので、なんとか新譜を発表していただいて、注目と再評価の機会を得てほしいものです。