プログレッシヴ・アンダーグラウンド・メタルのめくるめく世界

記事量が膨大になったので分割独立させました

【プログレッシヴ・デスメタル(便宜上)】 GOJIRA(フランス)

From Mars to Sirius

From Mars to Sirius


(2nd『The Link』フル音源)'03

(3rd『From Mars to Siriusフル音源)'05

(5th『L'enfant Sauvaga』フル音源)'12

'96年結成('01年に権利関係の問題からGODZILLA→GOJIRAに名義変更)。ハードコア寄りエクストリームメタルとしては現代最強バンドのひとつです。驚異的な演奏表現力と卓越した作編曲能力を併せ持つ実力者集団で、結成以来ずっと同じメンバーで活動できている点でも稀有な存在。思想云々の好き嫌いにとらわれず聴く価値が高いグループです。

GOJIRAの音楽性を非常に簡単にまとめると「MORBID ANGEL+NEUROSISをGroove Metal化したもの」という感じです。
(「Groove Metal」は日本でいう「モダン・ヘヴィネス」のようなスタイルで、PANTERAやSEPULTURAをいわゆるラウドロックに寄せたような、ミドルテンポで細かい刻みを連発するアレンジをハードコアの“跳ねる”質感をもつ演奏形式で形にした、というふうな音です。)
バンドが影響源として挙げているのはSLAYER・SEPULTURA・DEATH・MORBID ANGEL・MESHUGGAH・TOOL・METALLICA・PANTERA・NEUROSISなどで
そうしたものの音遣い感覚を複雑に発展させた高度な音進行を、ギターソロなどの“大きく変化していく”リードフレーズを殆どはさまないリフ・オリエンテッドなアレンジで展開していきます。そうしたスタイルで壮大な世界を描いていく構成力は相当なもので、Devin Townsendなどにも通じる音響もあわせ、いわゆる「ポストメタル」「アトモスフェリック・スラッジ」というようなスタイルにも通じる作風になっています。そちら方面を好む方も強くアピールしうる音楽なのではないかと思います。
そうしたスタイルのバンドと異なるのは、演奏スタイルが(ハードコアの“跳ねる”質感を持ちながらも)ブルータル・デスメタル寄りの激しく速いものだというところでしょうか。どんなに細かい刻みにも繊細なアクセントをつけて滑らかに表現してしまう超絶的なドラムスに、豊かな音色表現力を持ちながらも微妙に歪んだリズム処理をするギター・ベースが絡む。そうしてできるアンサンブルは、さながら「軸の傾いた超電磁嵐が荒れ狂う」ようなもので、長く同じラインナップで継続できている実力者集団でなければ成し得ない“癖のある密着感”が確立されています。これは他のどんな超一流バンドにも真似できない極上の珍味で、GOJIRAの音楽におけるかけがえのない売りのひとつになっていると思います。
このようなアンサンブルに乗るボーカルも非常に強力で、SEPULTURAの各ボーカルをDevin Townsend的な発声で強化したような逞しいエネルギーに満ちています。このラフな感じはメタルというよりやはりハードコア的で、知的で高度な音楽性に良い感じの“青臭さ”を加えていると思います。

そうしたボーカルの印象とも関係する要素なのですが、このバンドの歌詞のテーマはいわゆるニューエイジ思想に色濃く染まったものになっています。
生命の樹エコロジーなど“スピリチュアルな”題材にかぶれてる感が強い:そういえばバンド名の元ネタであるゴジラ自体、ニューエイジ云々の危うさはないものの、そちら方面から好まれ得るテーマを持つ作品でもあります)
シーシェパードなどとの関係もそちら方面への興味から来ているものなのだろうと思われます。
(2010年に「利益をそちらに寄付する」と発表して製作開始したEPは2015年現在も発売されていません。)
個人的には(シーシェパード云々はどうでもいいとしても)そういう過剰に“深刻に考え込む”様子と“無防備にかぶれている”危うい感じとが両立されている雰囲気がどうも苦手で(ボーカルの印象だけでなく音進行などにもそういう感じが出ています)、あまり素直にのめり込むことができないのですが、超絶的に優れた演奏表現力と作編曲のために、そうした雰囲気も唯一無二の味わい深い個性になっていると言うことはできます。波長の合う方はこの上なく楽しめるものにもなり得るのではないかと思います。

GOJIRAの発表した5枚のアルバムはどれも類稀な傑作ですが、その中から代表作を選ぶのであれば、2nd『The Link』('03年発表)か3rd『From Sirius to Mars』('05年発表)になるのではないかと思います。
2ndは上記のような“青臭く危うい”雰囲気があまり出ていなく、MORBID ANGELやMESHUGGAHに通じる要素が濃いめに残る作風になっています。過剰にシリアスな雰囲気を好まない方はこのアルバムから聴くのがベストでしょう。上記2バンドにも遅れをとらない圧倒的な音楽性を、あまり余計なことを考えず、存分に楽しむことができます。
3rdからは上記のような“意識の高い”雰囲気が濃くなっていき、それが苦手な方は多少辛いところがあるかもしれません。しかし、演奏表現力や音遣いに関していえばこのバンドにしか生み出せない卓越した個性を更に確立していき、作品としての深みもどんどん増していきます。その中でも3rdは“一枚モノ”としてベストな完成度をもつ作品で、この路線に踏み入っていくにあたっては、まずはこれを聴いてみるのがいいのではないかと思います。他の作品もまとまりが悪いわけではありません。MORBID ANGELの『F』『G』やブルータルデスメタルが好きな方などは4th『The Way of All Flesh』('08年発表)が一番接しやすいでしょうし、どの作品も聴く価値が高いです。

GOJIRAは(日本に関係のある名前を持ちながら)日本での知名度は低いままでしたが、2015年10月10日に開催されるLoud Park初日にブッキングされ、初来日公演が実現することが決定しています。現存する全てのエクストリーム・ロック・バンドの中でも群を抜いて優れた演奏表現力を持つ実力者集団ですし、生で体験する価値は極めて高いと思われます。音源を聴いてみてそこまで拒否反応が出なかったのであれば、ぜひ観に行かれることをおすすめしたいです。(私も未体験ではありますが)度肝を抜かれることを保証します。